2023年4月上旬、海岸近くの山道を散策していたところ道端に咲いた紫色の花に目が留まりました。鮮やかな紫色で個性的な花型、葉も銅色で魅力的な姿です。何の仲間の植物か全く見当が付かず、華やかな姿から最初は園芸品種の逸出かとも思いました。
自宅に帰って手元の植物図鑑をあたっても見当が付きません。そこで、植物判定アプリの「Picture This」をスマホにインストールし、この画像を読み込ませたところ、「ヒメハギ」と判定されました。
「Picture This」で示される見本画像はひょろっと徒長した姿だったので、「本当か?」と疑ったのですが、図鑑やネットで確認したところ確かにヒメハギで良さそうです。*1
花は紫色で、萼片が5枚、花弁が3枚、左右に広がった側萼片と花弁の先に白っぽい房状の付属体が付いているのが特徴のようです。
日当たりの良い乾いた環境に生えるようで、この付近では眺望のために尾根筋の木々が伐採された山道の道ばたに点々と咲いていました。
5月下旬、同じ場所を訪れてみると株元には実ができていました。
果実は円い萼片に挟まれています。この萼片は緑色で、まだ若い果実のようです。
こちらは萼片が茶色く枯れています。
同じヒメハギ科のうち、ヨーロッパ原産のトキワヒメハギは山野草として苗が販売されていますが、ヒメハギは市販されていないようです。
そこで、種を採取して播いてみることにしました。
萼片がまだ緑色の未熟果?の種は黒っぽく、萼片が茶色くなった完熟果?の種は茶色っぽい色でした。種の表面には毛が生えており、二股の白っぽい紐状のものが付いています。
これはエライオソーム(付属体)と呼ばれ、餌とするためアリが種ごと運び、エライオソームを外した種を捨てることで、種を分散してもらう仕掛けとのことです。
2023年5月28日、未熟果?31粒、完熟果?34粒をそれぞれセルトレイに1穴あたり2-3粒播きました。
6月中旬、発芽を確認することができました。
8月中旬、本葉が5-6枚に育った3株を2.5号スリット鉢に鉢上げしました。
一番左が未熟果?から、他は完熟果?から出た苗です。その後、9月上旬に完熟果?からの3株を鉢上げしました。
鉢上げまで育ったのは、未熟果?が1/31で3.2%、完熟果?が5/34で14.7%。やはり萼片が茶色くなった実の方が発芽率が高いようです。
8月に鉢上げした完熟果?の2株で大きい方の草丈は約6cmです。なお、未熟果?の1株は鉢上げ後に殆ど成長しなかった上、9月中旬に枯れてしまいました。また、9月に鉢上げした3株も出遅れたせいか、その後殆ど成長していません。
春の花は小さいながら鮮やかな紫色、花の無い時期も常緑の銅葉なので、上手く育てることが出来れば日当たりのグランドカバーとして使えるのではないかと期待しています。ただ、成長はゆっくりなので庭に下ろせるのは当分先になりそうです。
*1:その後も「Picture This」で分からない植物を調べてみましたが、種判別の精度はかなり高そうです。病害虫も判定できるようですが、そちらの精度は不明です。