山口市秋穂二島の岩屋山は標高101mと低い山ですが、周防灘に突き出した半島にある上、地元の方によって登山道脇の木々が刈り払われているため、お手軽に絶景を楽しめるスポットとして時々散策を楽しんでいます。
手前の島は山口市の竹島、その奥の陸地は大分県国東半島、画面左の水平線上に見えるのは大分県の姫島です。
正面奥の岩山は山口市の火ノ山連峰で、こちらも展望の良い低山です。
3月上旬からクスノキ科のアオモジが他の花より一足早く、輝くような黄色の花を咲かせます。自然分布は岡山・山口・九州・沖縄とされていますが、近年は栽培個体が逸出して関西や中部地方にも分布を広げているようです*1。
岩屋山付近のアオモジは天然分布のようですが、少し離れたところから山腹を見る限りあまり目立つ存在ではありません。里山に手が入らなくなったため、陽樹であるアオモジは他の高木との競争に負けてしまうようです。上写真の個体は空き地の脇に生えた樹高7-8mぐらいの大きな木でしたが、空き地が無かったら他の高木に埋もれてしまっていたのかも知れません。
岩屋山の登山道周辺では刈り払いで明るい環境となっているいるため、樹高2-3mぐらいまでの幼木は数多く生えています。一方で定期的な刈り払いのため、この写真のように花を咲かせるサイズまで大きくなれる個体は少ないようです。
登山道の周辺にはヤマザクラも比較的多く自生しています。ヤマザクラの赤い新芽と白花が醸す柔らかな雰囲気が大好きで自宅に植えていますが、山野に自生する個体の美しさには到底かないませんね。
また、ヤマザクラと同時期にザイフリボク(Amelanchier asiatica)も咲いていて、こちらも新芽の緑と白花がとても綺麗です。
ザイフリボクは日本・朝鮮半島原産で、北米原産のジューンベリー(Amelanchier canadensis)*2とは同属の別種です。
同属なので花の形はよく似ていますが、開花時に葉がほとんど開いていないジューンベリーよりも、開花時に新芽がある程度開いているザイフリボクの方が色合いが清々しく感じるため、個人的には好みです。
また、ジューンベリーは日当たりに強い、としている庭木の本も多いのですが、我が家では夏の終わり頃には早々に葉を落としてしまい、今のところ紅葉を楽しむことは出来ていません。ザイフリボクは雨の少ない山陽海岸部の痩せた花崗岩質の尾根筋にも自生していますので、庭に植えても強健なのではないかと思います。
ただ、残念なことにザイフリボクの果実は渋くて美味しくない*3ようですので、ザイフリボクを庭木として生産してもジューンベリーの人気には勝てそうに無いですね。
ところで、この登山道には地元の方がサクラの苗木をたくさん植えておられます。樹種名のプレートが無いため品種は分からないのですが、大きく育てば花見スポットとして人気が出そうです。
ただ、この山には今回紹介したアオモジ・ヤマザクラ・ザイフリボクなど魅力的な野生種が既に自生しています。登山道近くのアオモジをすべて刈り払わず、一部は花が付くサイズまで残すなど、自生種も活かすような管理をして頂くとより魅力的なハイキングコースとなるのでは無いでしょうか。
*1:
*2:一般的に種小名canadensisが充てられていますが、分類の整理が必要なようです。ジューンベリーとは|育て方がわかる植物図鑑|みんなの趣味の園芸(NHK出版)