雑木と歩む庭

雑木の庭でのガーデニング記録

培養土のリサイクル ~低濃度エタノール土壌還元消毒に挑戦~

 

培養土の処分問題と消毒方法

鉢で植物を育てていて困るのは使い終わった培養土の処分です。少量であれば庭の植栽場所に撒いていますが、それも限度があります。

そこで、培養土のリサイクルを考えることになりますが、使い古しの培養土には病原菌や害虫が残っていて、次に植えた植物に病虫害が出るリスクがあります。

そのため、よく紹介されるのが日光消毒と熱湯消毒です。共に60℃ぐらいに土の温度を上げることで、土の中の病原菌を減らすことが期待できるようです。ですが、日光消毒で土中温度を隅々まで60度以上にするのは真夏でも難しそうですし、熱湯消毒も土の量が多いと大量の熱湯が必要になる気がします。

そこで、土の消毒方法をネットで調べていて見つけたのが、「低濃度エタノールを利用した土壌還元作用による土壌消毒」です。これは、農研機構が農家向けに開発した技術で、環境に問題のあるくん蒸剤を使わず効率的に土壌殺菌が行えるとのことです。

詳しくは、下記など専門機関の資料をご確認ください。

www.naro.go.jp

低濃度エタノール土壌還元消毒の概要

具体的な手順は、ざっくり書くと、0.5-1%に水で希釈したエタノールをたっぷりと土に染みこませ、土の表面を透明フィルムで覆って2-3週間放置するだけです。

エタノールに弱い生物の遺骸やエタノールなどを土壌微生物が分解することで酸素が急速に消費され、土壌が還元的な状態になって化学的環境が変化することで病原菌やセンチュウを効率的に減らすことが出来るそうです。土の表面をフィルムで覆うのは太陽熱で地熱を上げて微生物の活性を上げること、酸素を遮断して土の湿潤を保つことで還元状態を保つ効果があるようです。

効果が確認されている病害虫は、ネコブセンチュウ、白絹病菌、萎凋病菌、青枯病菌などで、雑草の発生もある程度抑える効果があるそうです。また、燻蒸剤と違って土壌生物を皆殺しにするのではなく、糸状菌など還元状態に強い菌はあまり減らないため、菌の拮抗作用が働いて病害の再発が起こりにくいこともメリットのようです。

 

土の準備

消毒する用土 2024/9/7

青ジソを育てていたプランター培養土と、用土袋に入れて取っておいた使い古しの培養土、合計約20Lを消毒することにしました。

土壌還元消毒のポイントとして土を湿潤状態に保つことがあります。そのため、エタノールを蒔く前に土を湿らせておく必要があるのですが、使い古し培養土は乾き気味だったので、かなり湿っていたプランターの培養土と混ぜることでちょうど良い水分になりました。

 

エタノールの準備

エタノールの計量 2024/9/7

次に、土に播くエタノールの準備です。必要な水の量は深さ20cmの耕地土壌で1㎡あたり100Lの水が必要とのことなので、土20Lあたり10Lの水が必要という計算になります。

しかし、これは畑を湿潤状態にするための水量であり、今回は少量の土を用土袋に入れて処理するつもりなので、土がビショビショになれば十分だと判断し、とりあえず用土10Lあたり1Lの水で様子を見ることにしました。

エタノールはかなり前に買った濃度50%のものを使うことにし、濃度1%になるよう20mlを1Lの水道水に混ぜました。

 

エタノールの混和

エタノール混和後の用土 2024/9/7

ムラが出来ないようエタノール水を用土に混ぜ込みました。用土が元々湿っていたので10Lあたり1Lのエタノール水でもビショビショになったので、これで十分と判断しました。

 

処理中の用土保管

処理中の用土 2024/9/7

土を透明の用土袋に入れ、折り返した口を麻紐で縛って密封しました。今回消毒する土を保管していた袋を使ったのですが、穴が空いていたので袋は2重にしています。

土壌還元消毒は微生物の力を使うので土の温度を30℃以上に保つのもポイントだそうです。炎天下で温度が上がりすぎると酸素を消費してくれる微生物まで減ってしまいそうなので、とりあえずあまり日が当たらない差し掛けの下に土を置いて様子を見ることにしました。

土壌の還元化に成功するとドブのような特徴的な匂いが出るそうです、また少し掘った土が灰緑色を呈しているかも目安になるようなので、2週間後が楽しみです。

 

ところで、私は基本的にお金を出して購入した園芸植物には新しい培養土を使うようにしています。

一方、プランターで育てている野菜やハーブには使い古しの培養土を使っています*1。しかし、古い土を使っているせいか、プランター置き場が北側で日当たりの良くない場所のせいか、恥ずかしながら野菜やハーブで苗代や種代の元を取ったと思える収穫があったことはありません。

土壌還元消毒が成功して、リサイクルした培養土でも野菜やハーブが上手く育つようになって欲しいものです。

 

参考文献

低濃度エタノールを利用した土壌還元作用による土壌消毒 実施マニュアル (第1.2版) | 農研機構

低濃度エタノールを利用した土壌還元作用による土壌消毒技術

*1:野菜やハーブ苗にもお金は掛っているのですが、ついつい園芸植物をひいきしてしまいます (^^;)